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神戸地方裁判所 昭和55年(ワ)221号 判決

原告

松重君予

右訴訟代理人

辻晶子

山崎満幾美

大野町子

木村治子

伊東香保

山田康子

被告

財団法人神戸市婦人文化協会

右代表者理事長

土井芳子

右訴訟代理人

奥村孝

土井平一

美浦康重

阿部清治

石丸鉄太郎

右復代理人

鎌田哲夫

山本美比古

主文

一  被告は、原告に対し、三〇万円とこれにつき昭和五五年五月一〇日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は二分し、その一を原告の、その余を被告の各負担とする。

四  この判決は主文第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告は、原告に対し、五〇万円とこれにつき昭和五五年五月一〇日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告は、原告に対し、別紙記載の謝罪広告を「婦人神戸」新聞の第一面左側上段二段抜きで、本文は五号明朝体活字、見出、宛名及び被告の氏名は三号明朝体活字(ゴシック)をもつて二回掲載せよ。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  第一項につき仮執行宣言。

二  被告

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  原告の請求原因

1  被告協会は、兵庫県教育委員会の認可を得て昭和五一年一〇月一日設立された公益法人であり、原告は右設立時から昭和五四年六月七日に辞任するまでその監事であつた。

2  被告協会の寄付行為によると、被告協会の収支決算は、年度終了後二か月以内にその年度末の財産目録と共に監事の監査を経るべきことが定められているところ、被告協会は、原告に対し昭和五一年度、五二年度の監査を求めることなく、兵庫教育委員会に対し、昭和五二年六月、昭和五一年度事業報告のため末尾に原告外一名の監事の名で同年度被告協会収支決算及び証書類を審査した結果、正当であることを認める旨、同じく昭和五三年八月二五日昭和五二年度の収支決算書についても、原告外一名が会計監査をした旨、各虚偽の意見書又は証明を添付し提出した。

3  原告は、被告協会に対し、監事である原告の監査を受けるよう要求した。

(一) 被告協会は、昭和五四年五月一八日原告に対し同月三一日に監査を受ける旨の回答をしてきたが、原告が監査に着手してみると、昭和五一年度の収支決算書が監査未了であること、昭和五三年度の収支決算書と帳簿との間に種々の不整が存することが判明したので、原告は被告協会に対し右事項及び昭和五二、五三年度収支予算事業計画承認の理事会を開催すべきことなど問題点を指摘した。

(二) これに対し、被告協会職員五味多美子は理事妹尾美智子と協議して釈明することを約したが、同年六月一日神戸市職員が原告事務所を訪ね、被告協会常務理事妹尾美智子と原告との信頼関係が失われたから辞任するよう求め、さらに、同月二日監査が終了しないと理事会が開催できないので早急に監査を終るよう要請された。

(三) 原告は、かかる情況のもとでは、監事としての職務を正当に遂行することの困難を感じ、同月六日付で監事の辞任届を郵送し、同月七日送達された。

4  被告協会は、理事長土井芳子、常務理事妹尾美智子の寄付により設立されたため、右両名の専権により事業が執行されている。

同人らは、神戸市婦人団体連絡協議会(以下「市婦協」という。)の理事長ないし専務理事であり、市婦協には、神戸市下一三〇の団体単位婦人会からなり会員一〇万人を擁し、事業収益金、神戸市からの事業委託費は莫大な金額にのぼり市婦協の事業中、神戸市の社会教育事業により育成された任意団体としての婦人会の連合組織にふさわしい事業を残して他の収益事業、神戸市の委託事業を被告協会に移譲するため被告協会が設立された。

被告協会は、理事の大半が市婦協の理事又は単位区連合婦人会の会長であり、同市婦協の会員に入会の形で寄付を募り、事務局は事実上市婦協事務局に置いていたが、実質上理事会と一名の職員のみであり、計画された事業を円滑に遂行しうるような組織ではないのに、巧みに市婦協との組織的混同を利用し、市婦協会員の不知の間に一方的に被告協会の主催事業として執行し、その収益を被告協会の収入にとり込んだ。

例えば、神戸市から市婦協が委託を受けていた「人形の家」の運営を被告協会が運営してその運営収益を被告協会に帰せしめ、また、市婦協の活動成果を被告協会の機関紙「婦人文化」に収録して出版販売して収益をあげ、市婦協の会員から寄付を募るとか、市婦協の組織を利用して会員に図書を販売するなど、被告協会は収益をあげるために市婦協を私物化している。

5  被告協会の経理上、後記のような初歩的、非常識な不整を指摘することができ、これらは公益法人の公共性を考えればあるまじきことであつて、兵庫県教育委員会に提出された昭和五一、五二年度の収支計算書及び五一年度の財産目録はとうてい原告の認容できないものである。

(一) 無原則な事業執行、予算執行

法人の収入、支出は、事業計画と予算書に基づき執行されるべきものであるが、被告協会はこの原則を全く無視し、恣意的であり、予算上は職員三名の人件費を計上しながら、一名のみを雇用し、その余を理事長、常務理事の報酬に流用したり、予算に計上した事務所の賃料を支払わず、また、予算と無関係に多額の接待費、旅費、交通費を支出している。

(二) 寄付行為一一条違反

寄付行為一一条によれば、収支予算で定めるほかは新たに義務を負担し又は権利を放棄しようとするときは、理事会の議決を経て、かつ、兵庫県教育委員会の承認を経なければならないのに、以下の事実はこの規定に違反している。

(1) 事務所の購入 被告協会は、事務所として甲南スカイビル一一〇一号室を買い入れ、昭和五一年一〇月二七日付所有権保存登記を了しているが、理事会の決議、教育委員会の承認などを経ていない。

(2) 設立費等の負担 被告の設立資金七七万七八三三円につき、市婦協が昭和五一年一〇月四日に仮払いしたものを年度末に被告協会の支出に振替えているが、このように設立費を設立後に法人の負担とするには、理事会の議決を得ることを要するのにこれを経ていない。

被告協会が昭和五二年一二月二七日購入したファックス(印刷機)についても右と同様である。

(3) 理事長、常務理事の報酬 寄附行為一七条には、役員は無給とする、但し、常勤の役員は有給とすると定められているが、理事長土井、常務理事妹尾の両名は常勤の役員ではなく、かつ、昭和五一、五二年度予算書には役員報酬は計上されていないのに、理事会の決議や県教育委員会の承認を経ることなく、右両名に対し毎月報酬を支給している。

(4) 市長や職員に多額の餞別を支出している。

(三) 役員の利得行為

(1) 土井理事長、妹尾常務理事は、被告協会から昭和五一年一一月二六日、昭和五二年一月一一日各五〇〇万円、同年四月二〇日五〇〇万円、合計一五〇〇万円を無利子で貸出しを受けている。

(2) 事業執行と関係ない新幹線の回数券が昭和五二年度で合計九二万一〇〇〇円を交通費名目で計上支出している。

(四) その他

(1) 収支予算書によれば、会議費は理事会の費用であるべきところ、昭和五二年度の会議費名目で被告協会職員と他一名の海外研修費が支出されている。

(2) 被告協会が昭和五二年五月一〇日会費五〇〇〇円をとつて開催した講演とパーティの参加者約二二〇名の会費合計一一〇万円が収入として計上されていないし、パーティの経費が会議費として計上されている。

(3) 昭和五一年度財産目録は帳簿の実際と無関係に作成され、昭和五二年三月三一日現在における多額の預貯金残高の記載がない。

(4) 多種目の特別会計を設けてその収支を元帳に記入せず昭和五二年度については特別会計の収支を除外して収支計算している。

6  被告の不法行為

(一) 私文書偽造、同行使

(1) 被告協会は、兵庫県教育委員会へ昭和五一年度収支計算書を提出するに当り、原告がその審査をした事実もなく、内容においても全く虚偽の事実が記載されている昭和五二年四月一日付原告名義の意見書を無断作成し、これを右教育委員会へ提出した。

同意見書の内容は、「昭和五一年度財団法人神戸市婦人文化協会収支決算及び証書類を審査した結果、正当であることを認める。」というものであつた。

(2) 被告協会は、昭和五二年度事業報告書を提出するに当り、「事業収支決算書」の末尾に監事である原告名を偽造し、あたかも原本には会計監査をしたことを証する原告の署名押印が存在するかのような外観を呈した「収支計算書」を兵庫県教育委員会へ提出した。

(3) 被告協会による二度にわたる原告名義冒用の文書提出は、あたかも原告が当該収支決算書を正当と認め、その不整を容認し、被告協会と神戸市や業界との癒着関係を許したような外観を呈するものであり、これにより原告の名誉、信用は著しく損われた。

(二) 「婦人神戸」における名誉毀損

(1) 「婦人神戸」は、会員一〇万人といわれる市婦協の機関紙であり、市婦協の会員に対し月二回配布される。

(2) 昭和五五年三月二八日発行の「婦人神戸」は、「誇れる理想的な組織」という見出しのもとに、神戸市婦人団体協議会、神戸市消費者協会及び被告協会につき組織の説明をし、原告の本訴提起につき、「なお、経理のことは、文化協会は監査法人大成会計社税理士黒田晴男氏にお世話になつてみてもらつています。不正があるとか、書かれていますけど、いずれ裁判まで起こされたのですから、私たちもそうでないことは、その中ではつきり認めてもらいたいと思います。」と記載し、さらに右三団体について、原告が、その性格があいまいで、会員になつているだけで、会員による代表者の選出手続や運動方針を決める意思決定機関もない旨の発言をしたように記述したうえ、「結局、M弁護士(原告)が言いたかつたことは、財団法人神戸市婦人文化協会に五〇万円を支払えということでした。」「五〇万円のために、たくさんの裁判費用や、あちこちの手数をかける前に、少しでも話しあいに来られなかつたのでしようか。」と記載している。

(3) 婦人神戸の右記述は、原告に対する悪感情をむき出しにして事実に反することを捏造し、事実を隠蔽するなどして、あたかも原告の本訴請求が単に五〇万円欲しさに提起されたかのような印象を一〇万人の会員に与え、原告の名誉、信用を著しく傷つけた。

7  原告の損害

原告は、弁護士であり、社会的信用が職業上の生命であるところ、これまで神戸市の嘱託、委員、講師、法律相談などに携り、また、神戸新聞からの執筆委託や母子福祉協会の法律相談にも関与してきたが、被告協会との本件問題からいずれも解任されるという不利益を被つた。

しかし、原告は、金銭賠償のみによつて精神的打撃の償を求めるものではなく、本訴によつて、公益法人である被告が自らの姿勢を正し、公正にして民主的な婦人団体として新生することにより原告自身の精神的損害を償いたいと望み、五〇万円の限度で賠償請求をするにとどめ、かつ、原告の名誉、信用回復措置として、「婦人神戸」紙上請求趣旨記載の謝罪広告掲載を求める。

8  よつて、原告は、被告に対し五〇万円とこれにつき訴状送達の翌日である昭和五五年五月一〇日以降完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払と前記謝罪広告の掲載を求める。

二  被告の答弁

1  請求原因第1項の事実は認める。

2  同第2項のうち、被告が原告に対し昭和五一年度、昭和五二年度の各収支決算書につき監査を求めなかつた旨の主張は否認し、その余の事実は認める。

被告は、昭和五一年度については、昭和五二年五月二八日開催の理事、監事合同会議の席上、出席した監事山本静尾及び監事の原告に対し監査を求め、右両名の承認を得ており、昭和五二年度については、昭和五三年五月一五日開催の理事、監事合同会議の席上、出席の山本監事に監査期日の延期を申し入れ、その承諾を得た。それは、原告との間で監査期日の日程を調整してきたがその調整がつかなかつたためである。

3  同第3項のうち、原告が監査のため被告事務所を訪ねたこと、原告の辞任届が郵送されてきたことは認め、その余の事実は争う。

4  同第4項のうち、被告協会が土井芳子、妹尾美智子の寄付行為により設立され、土井が被告及び市婦協の理事長、妹尾が被告の常務理事、市婦協の専務理事に就任したことは認めるが、被告と市婦協との間に組織的混同は存しないし、その余の事実も争う。

5  同第5項につき、被告協会の経理につき原告主張の不整は存しない。但し、昭和五一年度の記帳については、設立後間もない時期であり、一部に初歩的ミスないし若干の混同がみられることは否定できないが、これは、被告の委託した公認会計士によつて昭和五二年度期首に訂正記帳がなされている。

(一) 期中の諸行事の収支は、個別補助簿に記帳したのち、当該行事の完了時に本会計の収支として移記している。

(二) 土井、妹尾らが昭和五二年度に二五万円ずつの役員報酬を受領したことは認めるが、原告も出席した昭和五一年九月一日開催の被告設立準備会において理事長及び常務理事は、当分の間有給とすることが承認されている。

(三) 神戸市長や同市職員に社会的相当な範囲のお祝い等をしたことはあるが、多額ではない。

(四) 被告土井、妹尾らに一〇〇〇万円の貸出しをしたこと、財産目録に記載されていないことは認めるが、貸借対照表に記載されている。昭和五一年度は、公益法人会計基準がなく、被告は起票、記帳決算まで一貫として企業会計ベースに従つており、貸付金のような資産科目は、企業会計ベースの収支計算ではその増減が記載されないのであり、また、財産目録に関する知識不足のため、処理に正確性を欠いていたものである。

(五) 昭和五二年度に合計九二万一〇〇〇円の新幹線回数券を購入した事実は認めるが、これは、被告の活動を推進するため在京の学者、学識経験者等との協議、調査、交渉などの用務で上京する理事に新幹線の切符を現物支給したものであり、被告の事業執行費である。

(六) 会議費名下に職員等の海外研修費を支出したことはない。収支予算書の会議費の摘要欄には、「理事会等経費」と記載されており、会議費は理事会の費用に限られるものではない。

(七) パーティ会費が収入として記帳されていない旨の主張は否認する。このようなものは、補助簿で収支計算し、清算のうえ差額を昭和五二年八月五日付で元帳に収入として利益計上している。

(八) 特別会計は設けていない。ただ、各種行事を施行した場合、その事業ごとに個別収支を記帳し、その清算完了時に元帳へ記載している。

6  同第6項(不法行為)について

(一) 原告は、昭和五一、五二年度の決算につき原告名義を冒用し、原告の人格権を侵害するかのように主張するが、原告は、昭和五一年度の決算については、昭和五二年五月二八日の理事、監事合同会議に出席し、決算報告書を異議なく承認しており、昭和五二年度の監査については、日程の調整がつかないことを理由に監査義務を怠り、監査の権利を放棄した。

法律専門家である原告は、民法五九条に、監事は理事の業務執行状況、法人の財産状況を監査することがその職務とされていること、被告法人が毎年一回三月三一日をもつて決算し、決算後二か月以内に監査しなければならないこと及び毎年監督官庁へ決算書類を提出しなければならないことを熟知しているはずであるから、原告が未監査のまま長期間放置するということは、被告の執行部を全面的に信頼し、関係官庁への必要書類に原告名義の使用を承諾したものとみざるをえない。被告としては、昭和五二年度決算案を大成会計社に委託して作成していたが、理事、監事の日程調整がつかず理事、監事会が開けずにいたところ、教育委員会の要求もあつたので、昭和五三年八月決算書を提出せざるをえなかつた。

(二) 昭和五一、五二年度の収支決算書にはなんらの不整もなく、監督官庁の教育委員会からもなんらそのような指摘はされていない。

仮りになんらかの不整が存したとしても、原告は前記のとおり右決算書を承認したのであり、その点、監事として不整を看過し、その発見ができなかつただけであつて、むしろ、原告自身の責任である。

(三) 原告主張の「婦人文化」は、被告の発行する新聞ではなく、被告に責任はない。のみならず、右記事もなんら事実を歪曲し虚偽の事実を掲載したものでなく、したがつて、原告の名誉を毀損するものではない。

7  被告は、昭和五三年度の監査については、事務局において昭和五四年五月初めごろより監査日程の調整に入り、同年五月三一日午前一〇時ごろと決定したが、原告の一方的都合により同日午後一時と変更され、さらにその時間にも原告が出席しないため現実には監査着手が午後三時ごろになつた。

原告は、同日午後四時には監査を中断し、その後被告からの監査要求にも応じないまま同年六月七日監事を辞任した。

第三  証拠〈省略〉

理由

一被告協会が土井芳子、妹尾美智子の寄付行為により兵庫県教育委員会の認可を得て昭和五一年一〇月一日設立された公益法人であり、右土井が理事長、妹尾が常務理事に就任し、原告は被告の設立時から昭和五四年六月七日辞任届を出すまでその監事の職にあつたこと、被告が原告主張のころ兵庫県教育委員会に対し昭和五一年度収支計算書並びに昭和五二年度事業収支決算書を提出し、右昭和五一年度計算書には、監事である原告と山本静尾が「同年度収支決算及び証書類を審査した結果、正当であることを認める。」旨の意見書を添付し、昭和五二年度決算書について、監事である原告及び山本静尾が会計監査をした旨記載されていることは当事者間に争いがない。

二本件の背景として、かねて消費者問題に強い関心を有してきた原告と市婦協(神戸市婦人団体協議会)、神戸市消費者協会及び被告文化協会との関係が根底にあるので、まず、被告と市婦協、神戸市消費者協会との関連をみてみる。

1  〈証拠〉を総合すると、次の事実が認められる。

(一)  市婦協は、婦人団体の連絡、協調と婦人の地位向上及び民主化をはかり、健康にして文化的な生活を確保することを目的とし、同目的達成のため必要な調査研究、婦人の教養と福祉の増進に関する事業等を企画、執行し、理事会・事務局のもと消費者協会など十二の実行委員会、婦人神戸編集局、はげまし積金管理委員会があり、会員約一〇万名を擁し、会長は土井芳子、専務理事妹尾美智子である。

そして、被告協会は、土井芳子が一五〇〇万円、妹尾美智子が一八〇〇万円の寄付行為をなし、これに基づき設立され、婦人に関する総合的な調査研究及び事業を行い、もつて、婦人文化の向上に寄与することを目的とし、右土井が理事長、右妹尾が常務理事に各選任され、この法人の収支予算は年度開始前に理事会の議決を経て定め、その収支決算は年度終了後二か月以内にその年度末の財産目録と共に監事の監査を経て理事会の承認を得なければならないと定め(寄付行為一〇条)、監事は民法五九条の職務(法人の財産の状況、理事の業務執行の状況等につき監査)を行うものと規定している(同一四条)。

(二)  原告は、弁護士であり、消費者運動に関心を抱き、消費者法研究会に参加していたことなどから妹尾美智子と知り合い、婦人文化協会(被告)設立とともに乞われてその監事に就任した。

原告は、ほかにも、神戸市消費者保護会議委員、神戸市消費者苦情処理委員会委員、神戸市生活情報センター非常勤嘱託などの委嘱を受けていた。

(三)  しかし、神戸市と神戸市消費者協会が「七七年消費者問題神戸会議」の名のもとに減速経済を迎えこれからの消費者問題解決の方向として消費者、企業、行政のいわゆる「三者合意」システムの確立を宣言して以来、原告は、消費者の主体性確立が達成されていない現状での右三者合意は幻想にすぎず、神戸市における消費者団体が企業、行政と癒着しているとして、市婦協ないし神戸市消費者協会に対する批判的意見を新聞、雑誌等に精力的に発表するとともに、被告協会に対しても、市婦協と混然一体となつて事業活動を行い、神戸市内のデパートや商店街から多額の寄付を受けたり、神戸市長や同職員に対し祝金、餞別等を供与し、反面、神戸市からの種々の事業委託を受けるなどの便宜を得ていると批判を展開した。

かような原告の活動は、消費者の一部に共感を呼び、市婦協の下部団体に属するもののなかにも土井会長・妹尾専務理事体制に批判的態度を明らかにし「神戸市の消費者行政を正す会」が発足するなど神戸市における消費者運動に波紋を投じることになつた。

2  原告は、本件訴訟を通じて、被告協会の体質を明らかにし、神戸市における消費者運動ないし婦人活動の是正を意図するものと主張している。

三原告は、被告が監督官庁である兵庫県教育委員会へ提出した昭和五一年度収支計算書(意見書を含む。)は監事である原告の監査を経ることなく提出されたものであると主張するので検討する。

1  〈証拠〉によると、被告協会は、昭和五一年度収支計算書の作成にあたり、事務職員の五味が他の同種法人のものを見倣つて原案をまとめ、妹尾常務理事の指示により有限会社田井鳩文堂に依頼して印刷したうえ、昭和五二年五月二八日開催の理事、監事合同会議の席上、右印刷した昭和五一年度収支計算書(但し、意見書の添付されていないもの)、昭和五二年度事業計画書及び収支予算書を各理事、監事に配布したこと、妹尾常務理事が同会議において、右決算書類につき、税理士とも相談してこのような内容のものとなつたが、異議がなければ右決算書のとおり承認して貰いたい旨の発言をしたところ、同会議に出席していた原告から右収支計算書中収入と支出との間で金額に差異があること、基本財産三〇〇〇万円が収入に計上されていないことにつき質問がされたが、その他については格別の質疑、応答も行われないまま終了したこと、他方、原告は、前記理事、監事合同会議において昭和五一年度収支決算書等の承認問題が議題となるであろうことは招集通知により予め知つていたし、また、右会議後も毎週一回被告協会の事務所と同一建物内にある生活情報センターに出勤しており、原告が前記決算書につき異議ないし監査の必要その他の意見の申入れをする機会は十分あつたにもかかわらず、原告からなんらの意見の開陳はなかつたこと、そこで、被告は、昭和五一年度収支計算書につき原告を含む監事、理事の承認を得たものと考え、「昭和五一年度財団法人神戸市婦人文化協会収支決算及び証書類を審査した結果、正当であることを認める。昭和五二年四月一日財団法人神戸市婦人文化協会 監事山本静尾 監事松重君予」と記載した意見書を作成のうえ、原告の閲覧、押印を受けることなくこれを右収支計算書に添付し、昭和五二年六月ごろ兵庫県教育委員会へ提出したことが認められる。

2  前記認定事実に照らすと、被告協会は、昭和五一年度収支計算書について、監事である原告ほか一名に直接閲覧を受けることなく同人らの名義で前記意見書を作成、提出したことが明らかであるが、他方、原告は昭和五二年五月二八日開催の理事、監事合同会議に出席し、その席上、妹尾常務理事より異議がなければ右決算書を承認して貰いたいとの発言があり、原告から上記のような若干の質問をしたほかは、監査未了の指摘もなく、また他の事項についても格別意見表明は行われなかつたこと、その後、原告が毎週一回被告協会の事務所と同一建物内にある生活情報センターに出勤しながら右決算書につき監査を申し入れたり又は監査書類の提出を要請した事実もなかつたこと、このため、五味、妹尾ら被告協会担当者ら(土井理事長はほとんど実務に関与しない。)は昭和五一年度収支計算書につき監事である原告の承認を得たものと考えたことが認められる。

3  そうすると、被告協会の事務職員五味ないしは妹尾常務理事が昭和五二年五月二八日の理事、監事合同会議の議事終了及びその後原告から昭和五一年度収支計算書につき監査の申入れがないことによりこれを監事の原告が承認したものと考えたとしても、無理からぬものがあり、その実質的な承認を得たものとして原告の捺印のないまま前記意見書を付して同年度決算書を兵庫県教育委員会へ提出したとしても、これにより被告に原告主張のような名誉、信用毀損につき故意、過失があつたものというのは困難である。

もつとも、原告本人尋問の結果によれば、原告は前記理事、監事合同会議の席上、妹尾常務理事が昭和五一年度収支計算書につき概略の説明をしたにすぎず、証拠書類の提出もないので、後日証拠書類を添えて正規の監査要請がなされるものと期待していたが、被告から監査請求がないので、立場上、原告の方から監査実施の申入れをするには及ばないものと考えていたことが窺われる。

そして、前掲各証拠によれば、原告が自から監査実施の申入れをしなかつたのは、上記のように消費者運動のありかたをめぐり市婦協ないし被告の幹部(土井、妹尾)とかなり深刻な意見の対立が見られたことにもその一因があつたものと推認される。

しかしながら、原告は、弁護士として法律専門家であるから、被告協会の監事が寄付行為の定めるところにより民法五九条に従い法人の財産状況、理事の業務執行の状況につき監査をなすべき義務と権限を有することは十分認識していたはずであるし、前記理事、監事合同会議の席上、当然監査が実質的に行われていないことを取り上げて異議を申し立てるか、少なくとも、証拠書類の審査が済むまで監事としての賛否を留保すべきであつたし、それができないとすれば、右会議終了後できるだけ速やかに監査の申入れをなすべきであつたということができ、原告がかかる行為にでることなく、漫然被告協会の監査申出を待つていたとすれば、法律家である弁護士たる監事として十分であつたとはいい難く、他方、かかる情況のもとで、被告協会側で原告の承認ありと受けとり、その後の手続を執つたとしてもやむを得ないであろう。

四次に昭和五二年度収支決算書についてみる。

1  〈証拠〉を総合すると、被告は、新たに公益法人会計基準が施行されたこともあつて、昭和五二年六月ごろから決算処理事務につき大成会計社に依頼し、同会計社所属の公認会計士の指導を受けていたこと、被告協会では、昭和五二年度収支決算書を理事会にかける準備として、昭和五三年五月ごろから監事の監視を受けるため原告及び山本静尾の日程の都合を二、三回照会したが、右両者の日程が齟齬し、容易に一致しないまま日時が過ぎ、理事会も同年五月から七月にかけて都合が悪いため開催できずにいたところ、同年八月ごろ兵庫県教育委員会より昭和五二年度収支決算書の提出を求めてきたので、被告の事務員五味は、妹尾常務理事の指示により、まだ監事である原告ほか一名の監査を受けてはいなかつたが、同年度の収支決算書として「会計監査 山本静尾  松重君予」と記載したものを同年八月二五日兵庫県教育委員会宛提出したこと、その後、昭和五四年五月三一日被告から原告に対し関係書類を添えて昭和五三年度収支決算書の監査を求めてきたので、原告は、前年度からの事業継続、繰越し等を調査するため昭和五二年度収支決算書の提出を求めたところ、被告は同年度収支決算書中「会計監査 山本静尾  松重君予」と記載した部分に上から白紙を貼つて同部分が見えないように蔽つたものを提出したこと、原告は右決算書案につき大成会計社の田中公認会計士の説明を求めようとしたが、同人が当日出張していて不在のため審査を他日に続行したところ、同年六月一日神戸市白石物価対策課長(元生活情報センター所長)が原告のもとに訪れ、原告と妹尾常務理事との信頼関係が失われているなどと発言したことから、原告はひどい衝撃を受け、被告の土井理事長宛に同月六日付辞任届を提出したことが認められる。

2  被告は、原告が前記認定のような長期間昭和五二年度収支決算書の監査をしないまま放置したことにより原告は監査の権利を放棄し、右決算書につき承認を与えたものと推定しうると主張するけれども、上記認定したところからも、被告が監事である原告の承認を得ることなく昭和五二年度収支決算書を兵庫県教育委員会へ提出したのは、昭和五三年八月であつて、被告主張のように長期間経過したものとはいえないのみならず、その間に全く原告の了承を得ることなく右決算書を提出したものであつて、これにより原告の黙示の監査ないしは右決算書に対する黙示の承認ありと推定することは到底許されないものというべきである。

3  そこで、被告の提出した昭和五二年度収支決算書の内容が原告の名誉、信用を毀損するものであるかどうかについて検討する。

(一)  経理上の不整

(1) 昭和五二年度収支決算書は、公益法人会計基準に定める方式に従うものであることを要するところ、〈証拠〉に徴すると、右基準に定める資金収支決算書が脱落しており、かつ、被告協会寄付行為(一〇条)に規定している財産目録の添付がない。

(2) 事務職員の給与 〈証拠〉によると、昭和五二年度予算には、職員三名分の給与を計上しておきながら、実際には事務職員一名のみの雇用にとどめ、その差額を流用している。

(3) 理事長、常務理事の報酬 〈証拠〉によると、被告の寄付行為には「役員は無給とする。但し、常勤の役員は有給とすることができる。」と定められている(一七条)が、被告協会の日常業務は事務職員五味と常務理事妹尾の両名で処理し、土井理事長は妹尾常務理事の判断に余るときその決裁を仰ぐ程度であること、昭和五一、五二年度の予算書には、役員報酬の計上はされていないので、これを有給とするためには理事会の議決と兵庫県教育委員会の承認を要するところ、そのような手続はいずれもとられていないのに土井、妹尾両名に対し各自毎月二五万円の報酬が支払われていることが認められる。

右事実に照らすと、土井理事長は常勤の役員ということはできないので報酬の支払は許されないし、妹尾常務理事に対する報酬の支払も手続的に不適法なものというべきである。

(4) 市長・市職員への餞別等 〈証拠〉によれば、被告から昭和五二年六月一日宮崎神戸市長、小林青少年対策室長、宮本実に対し餞別として二〇万円、同年一〇月一〇日神戸市長へのお祝として三越神戸店より一六万三八〇〇円の品物を各贈呈していることが認められる。

(5) 海外研修費 〈証拠〉によると、被告が昭和五二年一二月一四日研修費として四一万九五〇〇円を近畿日本ツーリスト株式会社に対して支払つているが、昭和五二年度の事業報告書には研修費として右金額の記載はない。

(6) パーティ収入 〈証拠〉によると、昭和五二年五月一〇日楠公会館において、被告主催の「講演とパーティーの会」を開催して会費一名五〇〇〇円とし、約二〇〇余名が参加し、右費用として同月一二日八一万九四二円を支出したことが認められるけれども、収支の差額がどのように処理されたか不明である。

(7) 理事長、常務理事への貸付 〈証拠〉によると、右土井、妹尾は、被告より昭和五一年一一月二六日五〇〇万円、昭和五二年一月一一日五〇〇万円、同年四月二〇日五〇〇万円の貸付けを受け、右一〇〇〇万円については、昭和五一年度の財産目録に記載せず、昭和五二年六月一日一五〇〇万円を返済し、定期預金に預け入れた旨の記帳がされている(証拠保全記録三二九丁)。もつとも、証人妹尾美智子の証言によれば、右貸付金は市債購入費の一時的立替であるとしているが、いずれにしても会計処理の不整の点では変りがない。

(8) 保育園連盟設立二〇周年記念寄付金 〈証拠〉に徴すると、右寄付金として支出された一〇万円は、本来、市婦協が支出すべきものを被告が支出しているものと認められる。

(二)  昭和五一年度中の支出入は昭和五二年度の収支決算と直接関係がないので、ここでは検討の対象外とするが、そのほかにも、以下のものは、昭和五二年度収支決算書の不整とは関係がない。

(1) ファックス(印刷機)の購入とその使用料 〈証拠〉によると、被告の出捐により昭和五二年一一月一日印刷機ファックスを四〇万八〇〇〇円で購入し、これを市婦協の事務所内に備え付け、市婦協から使用料を徴収していること、従前、市婦協が会員などの需要に応じてコピーさせ、その使用料を得ていたことが認められるが、被告協会による右ファックス使用料の徴収は、一般にも見受けられるものであつて、別段これにより正当な理由もなく市婦協の取入源を横取りしたものと認めさせる確証はない。

(2) 新幹線の回数券 〈証拠〉によると、被告では、昭和五二年度に新幹線の回数券九二万一〇〇〇円を購入、費消しているが、これは東京から招へいする講師又は理事長、理事らの公用出張につき実費負担として現物支給されたものであり、同年度に交通費として一七四万五七〇〇円が支出されていることと右の事実は矛盾するものではなく、これが理事らによる不正領得と目すべき証拠はない。

(3) 人形の家 〈証拠〉によると、人形の家は、土井芳子個人が収集した人形を神戸市に寄付し、神戸市立婦人会館の一部を改築して「人形の家」として昭和五二年九月二〇日開館し、その運営を被告が行うことになつたものであり、このことは、昭和五二年度事業報告書中にも明記され、そのパンフレット印刷代三〇万円を被告が負担し(証拠保全記録一四八丁)その収入も雑収入として記帳されている(同一五三丁)。

もつとも、証拠保全記録によると、右印刷代の請求書宛名が市婦協となつている(三五五丁、三五六丁の一)が、これは、市婦協も同一建物内に事務所を有するために生じた業者の単なる混同によるものとみられるから、前記認定を覆すものではなく、このこと故に直ちに市婦協と被告協会との会計処理上の混同を意味することにはならない。

(4) 民踊のつどい、図書出版販売等 〈証拠〉によると、被告協会は、昭和五二年度事業報告書中、生活文化事業として「民踊の集い」を企画実行し、また、出版事業を掲げており、収支計算書中にも極く概括的ではあるが右に関する収支を計上していることが認められるから、この点に関し、別段の不整は認められない。

(5) 特別会計 原告は、被告が多くの特別会計を設けて全体の会計を不明にしていると主張するが、〈証拠〉によると、被告協会が法人として発足した当初、事務職員の不馴れのため帳簿整理、記帳等に若干の遺洩や誤記が認められたけれども、各事業毎に記帳した収支を最終的に整理合算しており、特別会計を設けて会計を不明にしたという原告主張は当らない。

(三) 被告がその内容に前記認定のような不整の認められる昭和五二年度収支決算書を原告の監査を経ることなく兵庫県教育委員会へ提出したことは明らかであり、しかも、右決算書の末尾には、「会計監査山本静尾  松重君予」と記載し、これは、あたかも原本については原告外一名の会計監査を経由したものと受けとれる外観を呈するものと認めざるを得ない。

そして、原告本人尋問の結果によれば、原告が被告の昭和五二年度収支決算につき監査を実施しておれば、前記不整について当然発見し、これを是正することができたものと認められるから、原告の監査を経ることなく右収支決算書を監督官庁の兵庫県教育委員会に提出した被告の行為は、原告に対する不法行為を構成するものというべきである。

もつとも、前記のとおり、被告側では、原告ら監事に対しその監査を求めるべく再三原告に連絡をとり日程の調整に努めたが、原告らの日程が折り合わないため延引するうち、兵庫県教育委員会よりその提出を督促され、やむなく未監査のまま提出した事実を窺うことができるけれども、その間全く原告の了承を得る余裕すらない程さし迫つた情況が存したものとは到底認め難いから、右は前記違法性排除の抗弁たり得ないし、また、証人五味多美子、同妹尾美智子の証言によれば、兵庫県教育委員会から右決算書につきなんら不整箇所の指摘を受けていないことが認められるが、だからといつて、未監査決算書の提出が許されるとか、原告の名誉、信用が毀損されないというものではない。

五謝罪文掲載について

昭和五五年三月二八日付婦人神戸に原告主張の記事が掲載されたことは当事者間に争いがない。

ところで、〈証拠〉によると、婦人神戸は市婦協の機関紙であつて、その会員約一〇万名に対し、定期的に配布される刊行物であること、右記事には「神戸市婦人団体協議会、神戸市消費者協会、財団法人神戸市文化協会のことが新聞にのりました。……私たちが監査をさせなかつたと言つておられるのですが……」などとあり、他にも「私たち」という語句がでてくるけれども、婦人神戸の編集発行自体は被告と別団体である市婦協が行つているものであつて、いかに、被告の土井理事長が市婦協の会長を兼ね、被告の妹尾常務理事が市婦協の専務理事を兼ねていたとしても、前記の記事が被告協会の意思によるものであるとは判断できないし、他にこれを首肯せしめるに足りる証拠はない。

したがつて、被告に対する謝罪方法として原告主張の謝罪文を婦人神戸に掲載させることを命ずるのは適当でないものと思料する。

六原告の損害

以上の認定事実に照らすと、原告は弁護士であり、社会的信用が職業上最重視されることは多言を要しないところ、被告が前記のような不整のある昭和五二年度決算書を原告の監査を経由していないのにあたかもその監査を経たかのような外観を呈する形で監督官庁の兵庫県教育委員会に提出した行為は、甚しく原告の社会的名誉、信用を低下せしめるとともに、原告に対し多大の精神的打撃を被らせたであろうことが認められる。

ところで、原告は、本訴において、単に原告の被つた損害につき金銭的賠償を求めるものではなく、公益法人としての被告の体質を改善するとともに健全な婦人運動、消費者運動の発展を意図するものであると主張し、昭和五一、五二年分決算書につき五〇万円の損害賠償を求めているが、本訴は、ひつ竟、右金額の請求として、前記のとおり昭和五一年度収支計算書については請求は理由がないので、昭和五二年度収支決算書につき、被告は原告の被つた損害賠償として三〇万円の支払義務があるものと判断する。

七結論

よつて、被告は原告に対し三〇万円とこれにつき訴状送達の翌日である昭和五五年五月一〇日以降完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務があり、原告の本訴は右限度で認容し、その余を失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官牧山市治)

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